TRPGBOX

TRPGに関するよもやま話を書くブログです

一夜の狩り

SSでのセッション報告です。(一部脚色&省略)

 

バーの個室で、少しオドオドした様子の男はフォントと名乗った。
どう考えても偽名。歳は、30代のヒューマン。
私服だが、表の仕事をしてます、って感じの佇まい。
ま、貰えるものを貰えるなら、問題なし。
彼を紹介したロシア系のフィクサーは、仲間の長年の付き合い。
紹介するビズは、一応、信頼できる。

 

密売人から受け取る予定だったクリッターが、
輸送途中で盗まれたので、取り返して欲しい。
それが、依頼。
密売人から、手付けは返して貰ったが、
どうしても諦めきれないらしい。
クリッターは、バステト...話を聞きつつ、
ARモードでマトリックス検索。
...ネコ科の電子生物(テクノクリッター)。
ネコ科でも色々と居るが、どうやら豹から覚醒したバステトらしい。
彼は、彼女をどうしても手に入れたいと興奮している。少しキモい。
確かに、普通に流通はしていない珍しい生き物だ。
テクノマンサーである私と同じぐらいには。

 

ミートじゃ、上手く喋れないから、交渉は仲間にお任せ。
上手く成功報酬を釣り上げた仲間と共に、バーを退散。
根城にしているマンションに移動しながら、
調べたバステトの情報を共有する。
密売人は、ケルベロスという密売グループ。
それなりの裏稼業の人間でも、ちょっと手を出すのは控える
ぐらいには、規模が大きい。
仲間と共に、知り合いに聞き込みをしつつ、
深いソファに沈みこみ、マトリックスにダイブする。
落ち着く。やっぱり、こちらが私の世界だ。

 

調べた情報を仲間と突き合わせると、簡単に裏が取れた。
ケルベロスの輸送車を襲ったのは、
最近売出し中のフレイムバイコーンという名前のゴーギャング。
実力を弁えず、格上の相手に手を出すのは、
グールだからかな、と仲間が笑う。
命知らず、という意味の冗談だと分かったが、
あまり面白いとは思わなかった。
どうやら盗んだのは、バステトだけじゃないらしい。
ガーゴイルバジリスク...なかなかいい趣味をしている。
盗んだクリッターを売り渡そうとしている
相手の情報も分かったが、それは後回しにした。
今晩でケリをつけられると思う。多分。

 

仲間のバイクと車で、安めの店が立ち並ぶストリートにやってきた。
目的のゴーギャングが根城にしているバーは、60メートルほど先。
薄っすらと明かりはあるが、客を待っている様な感じじゃない。
昼間は、幾つかの店も空いているだろうが、
治安のあまり良くないストリートは人通りも殆ど無い。
仲間は、路地裏に縮こまってるスクワッターを見かけて、挨拶に。
その間に、私は、車の後ろ座席から電網の視野を広げる。
バーの中には、監視カメラとマグロックがたくさん。
ここからは本番。仲間に合図を送ると、私の身体は座席に倒れ込む。

 

次の瞬間、私は眼の前のバーのホストの傍らに立っていた。
ホットモードなので、ペルソナが軽い。念の為に隠れつつ、
ホストにマークを付ける。楽勝。ホストの扉を開け、
中に入る。素人レベル。いい感じ。
監視カメラとマグロックと幾つかの情報を管理しているだけ。
映像記録を覗いて、バステトが入れられた特製の檻を発見。
「あなたもあの子を助けに来たの?」
後ろから掛けられた声に、凍りつく。

 

知り合いのピエロデッガーなら
ペルソナの口から心臓を飛び出させている。
そのぐらい驚きながら振り返ると、
そこには豹のマスクを被った女が立っていた。
カチューントリデオから飛び出してきたか?
気狂いデッガー...でも腕は一流っぽい。
逃げるか、戦うか、逡巡してると、
バステトを助けるのならサポートしてくれるらしい。
助けを求められたのだと語るジャガーガール。
二割ぐらい信じて、サポートを依頼。

 

監視カメラに偽の映像を流し続けつつ、
仲間のコムリンクにバーの見取り図と
ゴーギャング達の居場所をポップさせる。
そして、バーのホストのスレーブになってるマグロックを解除。
仲間は、忍び足で、地下のバーの扉に続く階段を降りていく。

 

仲間が扉を開けた次の瞬間、狩りの始まり。
グールのゴーギャングだろうと、瞬きの間に、撃たれ、斬られ、倒れていく。
警戒はするが、私の仕事は終わった。
「キー解除されたわ」
ジャガーガールの言葉。
チョンボ。檻のマグロックは、ホストのスレーブじゃない。
コムリンク?解除?いや、マークを取ってない。間に合わない。
グロックをブリッキング...駄目だ。開くだけ。
...しかたない。奥の手だ...私のペルソナに電紋の輝きが広がる。
マトリックスの通常の法則を無視して、檻にマグロックが再び掛る。
驚愕の表情でコムリンクを眺めるグールの禿面を想像。
「...制圧完了。」
即座にミートワールドのプロフェッショナルからコールが入った。
さすが。ビズの一番重要な所は、分にも満たないものだ。

 

仲間が、バステトの無事を確認。
その報告を聞きつつホストから出ると、
ジャガーガールが笑みを浮かべて声を掛けてきた。
「今回は、ありがとう。困ったら、私を呼ぶといいわ」
そう言うと、姿を消した。電紋の揺らぎを残して。
マトリックスは変なのばっかり。面白いけど」
そして、私達の一夜の狩りは終わる。